東京大学グローバルCOE 生体シグナルを基盤とする統合生命学
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2つのヒストンのリン酸化によって染色体のセントロメアが規定される

(Yamagishi, Y.*, Honda, T.*, Tanno Y. and Watanabe, Y. “Two histone marks establish the inner centromere and chromosome bi-orientation.” Science 330, 239-243 (2010) (*equal contribution))

細胞の染色体は遺伝情報を担うことで知られています。体細胞の染色体分配のときに、複製された染色体のコピーが2つの娘細胞へ均等に分配されるためには、染色体の中心部分にある動原体が反対方向からのスピンドル微小管によって捕らえられることが重要です。オーロラキナーゼ複合体は動原体の間のセントロメアという場所に局在し、微小管と動原体の結合部位をリン酸化することにより、間違った結合を修正する働きがあります。このように、セントロメアは染色体が正しく分配されるために必須の機能を果たしている染色体上の場所として古くから知られていましたが、その形成機構は今まで分かっていませんでした。今回の研究により、セントロメアは染色体上に広く存在するヒストン複合体のリン酸化によって決まることが明らかになりました。すなわち、オーロラキナーゼ複合体が、シュゴシンというタンパク質と協調して、ヒストン複合体の構成因子であるH2AとH3の特異的なアミノ酸のリン酸化を直接認識してセントロメアに局在することを突き止めました。また、この2つのヒストンのリン酸化は、動原体に局在するBub1キナーゼと、染色体ペアの接着部位に局在するHaspinキナーゼによって担われており、これらのリン酸化が空間的に交わった部位にセントロメアが形成されることを意味します(図)。酵母とヒトの細胞の解析から、この機構は保存された機構であることを証明しました。本研究は、染色体のセントロメアという場が空間的にどのように規定されるかという生物学の根本的な問題を明らかにしました。

本GCOEプログラム事業推進担当者
分子細胞生物学研究所教授 渡邊嘉典

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