東京大学グローバルCOE 生体シグナルを基盤とする統合生命学
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サイクリン依存性キナーゼによるリン酸化反応が染色体分配の方向を制御する

(Tatsuya Tsukahara, Yuji Tanno and Yoshinori Watanabe. “Phosphorylation of the CPC by Cdk1 promotes chromosome bi-orientation.” Nature 467, 719-723 (2010))

サイクリン依存性キナーゼは、細胞周期促進因子として広く知られたタンパク質リン酸化酵素であり、その制御異常が細胞のガン化の主要原因であることが知られています。しかし、サイクリン依存性キナーゼの染色体分配における役割は不明でした。今回、酵母を用いた研究で、このサイクリン依存性キナーゼの構成因子サイクリンに特殊な変異が生じると、染色体分配の方向に異常が生じることを見出しました。オーロラキナーゼ複合体は動原体の間に局在し、微小管と動原体の結合部位をリン酸化することにより、間違った結合を修正する働きがあります(図)。今回単離したサイクリン変異株では、オーロラキナーゼ複合体のセントロメア局在が低下することが分かりました。これに端緒を発して、サイクリン依存性キナーゼがオーロラキナーゼ複合体をリン酸化することによって、そのセントロメア局在を促進する役割があることを発見しました。さらに、オーロラキナーゼ複合体は、このリン酸化に依存して、セントロメアに局在するタンパク質・シュゴシンと直接結合することによりセントロメアに局在できることを明らかにしました。また、分裂酵母を用いて明らかにしたこれらの機構が、ヒトの細胞でも保存されていることを証明しました。これにより、サイクリン依存性キナーゼの染色体分配における新しい役割が明らかになると同時に、細胞のがん化の一つの経路が明らかになった可能性が考えられます。

本GCOEプログラム事業推進担当者
分子細胞生物学研究所教授 渡邊嘉典

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