東京大学グローバルCOE 生体シグナルを基盤とする統合生命学
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ヒストンのリン酸化が染色体の正確な分配を保証する

(Science 327, 172-177 (2010))

Bub1は18年前に発見された、染色体の正確な分配に必要なタンパク質リン酸化酵素(キナーゼ)です。ヒトの癌細胞の遺伝解析およびマウスを用いた遺伝子改変実験から、Bub1キナーゼに変異が生じると癌が多発することが証明されていますが、Bub1キナーゼが細胞内のどのようなタンパク質をリン酸化することによって、正確な染色体分配を保証しているのか、その分子機構については多くが謎に包まれていました。今回の研究では、Bub1キナーゼの主要なリン酸化の標的が、DNAを巻きつけるタンパク質複合体の構成因子であるヒストンH2Aであることを見出しました。このリン酸化が、最終的に、染色体が二方向から捕らえられることを保証するタンパク質シュゴシンの局在および働きを促進することも明らかにしました。酵母細胞を用いて解明したこれらのBub1キナーゼ経路は、ヒトの細胞でも高度に保存されていることを合わせて証明しました。すなわち、ここで見出された経路は、すべての生物が進化の過程で守ってきた染色体ゲノムの分配を正確に行うための本質的な機構といえます。また、シュゴシンは、生殖細胞で染色体を半数に減らす減数分裂の過程でも本質的な役割をもつことが分かっています。本研究成果は、長年謎であったBub1キナーゼ経路の全貌を明らかにするとともに、染色体分配不全によって引き起こされる細胞の癌化およびダウン症などの根本的な原因解明に大いに役立つことが期待されます。

本GCOEプログラム事業推進担当者
分子細胞生物学研究所教授 渡邊嘉典

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