東京大学グローバルCOE 生体シグナルを基盤とする統合生命学
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核内糖修飾を介するビタミンA誘導性免疫細胞分化促進機構の発見

(Nature, 459:455-459, 2009)

 細胞の多様性は、エピゲノムと呼ばれる遺伝子発現の多様性によって規定されています。ポストゲノムにおいて、これらエピゲノムがどのように遺伝子DNA上に記憶され、細胞の個性を決めているのかが重要な研究課題の一つとなっています。その答えのひとつとして、染色体構造タンパク質ヒストンの翻訳後修飾であることが注目を集めています。本学分子細胞生物学研究所・核内情報研究分野の藤木亮次助教、加藤茂明教授らは、核内の糖付加反応が転写活性化に関連するヒストンメチル化酵素を賦活化させ、細胞の分化誘導に寄与することを明らかにしました。

 まず、研究グループは細胞分化の古典的なモデル系である、ビタミンAが前骨髄球様HL60細胞を成熟顆粒球様の細胞に分化させる現象に着目しました。生化学的な精製手法から、その核内制御因子のひとつが転写活性型のヒストンメチル化酵素(MLL5)であることを見出しました。さらに、MLL5はO-結合型N-アセチルグルコサミン(O-GlcNAc)転移酵素(OGT)と複合体を形成しており、MLL5の活性化にはOGTによる糖付加反応が必要であることを明らかにしました。一方、細胞外グルコース濃度は核内のGlcNAc修飾レベルと比例し、MLL5の糖修飾状態を間接的に制御するため、これに応じてHL60細胞のビタミンA分化応答性が上昇することを見出しました。従来、糖(鎖)付加修飾は細胞膜上タンパク質の機能調節に重要とされてきましたが、今回の報告によって、核内における新たな細胞機能制御への作用点を提唱することができました。本成果は、英国科学雑誌Nature 5月21日号に掲載されました。

本GCOEプログラム事業推進担当者
東京大学分子細胞生物学研究所・教授 加藤 茂明

図1